「イノベーション」というと車や通信の技術…


 「イノベーション」というと車や通信の技術革新がすぐ頭に浮かぶが、資源エネルギー庁のホームページに「原子力にいま起こっているイノベーション(後編)~実は身近でも使われている原子力技術」という記事が載っている。

 例えば、がんの検査や治療の現場で。「骨シンチグラフィ」という検査は、わずかな放射線を発する放射性物質をがん細胞に取り込ませ、体の外から追跡する。どの部位にどの程度転移しているかを調べられる。

 治療では、放射線(α線)のエネルギーを集中して与え、がん細胞だけを消滅させる。α線以外に、実用化を目指し研究が進められているものが複数ある。

 このほか、科学の基礎となる測定に放射線技術が欠かせなくなった。近年、ピラミッド内部の未知の空間を探り当てたという考古学のニュースが話題になったが、放射線(ミュー粒子)を当て内部の空洞を見つけ出す手法によるものだ。今後、生活用品の欠陥を見つける金属工業などの分野に幅広く展開も。

 原子力技術の基本はエネルギー抽出だが、医療、工業、農業、科学、日用品など身近なところで利用されている。「原子力から他領域への展開、各領域での開発、改善された科学技術を相互に反映し合い」「科学技術としての総合化が図られることになる」(藤家洋一著『原子力-総合科学技術への道』)。

 政府は、原子力社会の到来を見据えた準備や、国民へのPRが少な過ぎないか。