地球温暖化防止を目指す新たな国際枠組み…


 地球温暖化防止を目指す新たな国際枠組み「パリ協定」の運用は、今年1月から始まっている。協定は、産業革命前から今世紀末までの気温の上昇幅を2度未満、できれば1・5度未満に抑制することを目指している。

 そのため、参加各国は温室効果ガスの削減に自主目標を立てて取り組んでいる。だが、その削減量を合わせても2度未満の目標には届かない。そこで昨年9月に目標の上積みを図る「気候行動サミット」が開かれた。

 国内の温室ガス排出量を実質ゼロとする達成時期について、欧州連合は昨年から「2050年」を目標に立てた。それでもサミットで実質ゼロとする目標を公表したのは77カ国。協定参加国の半数に満たなかったのである。

 日本は実質ゼロの達成時期を「今世紀後半のできるだけ早い時期」としていた。それを先月の所信表明演説で、菅義偉首相は50年までに達成し経済成長を目指すことを表明した。

 その道のりが険しい。従来のエネルギー政策の延長では展望がないことは明らかだ。ここは環境などあらゆる技術を総動員し、知恵を絞って革新していくほかない。「気候変動問題を技術革新やビジネスチャンスの拡大で乗り越える」(梶山弘志経済産業相)のだ。

 水素エネルギーなど再生可能エネルギーの拡大や、新規増設と再稼動による原子力発電の大胆な推進に踏み込めるかどうか。菅内閣が30年先の実現に向け、道筋をどう付けていくのかは今問われる。