「敷居が高い」を「高級過ぎて入りにくい」…


 「敷居が高い」を「高級過ぎて入りにくい」の意味だと多くの人が思い込んでいた。ところが、本来は「相手に不義理をしているので行きにくい」だった。文化庁「国語に関する世論調査」で初めて知った。多くが「敷居の高さ」を「高級」という意味で理解している。

 「不義理」という人間関係の問題ではなく、「高級」か「高級ではない」かの問題として「敷居」を理解する傾向が、時代の流れと共に強くなったことを調査は示している。

 文化庁担当者の「不義理という感覚自体がなくなった」との分析は当たっていよう。「不義理」の反対は「義理」だが、そもそも「義理」という感覚が急速に失われている。「不義理」がなくなるのも当然だ。

 言葉は生き物だから、時代によって変わるのは自然な話だ。30年後に「敷居が高い」が「高級」の意味で使われるのが正解とされるかもしれないし、「敷居が高い」という用法そのものが消えてしまうかもしれない。

 それ以前に「敷居」という単語が分からないケースが増えてくる可能性もある。障子やふすまの下にある溝の付いた横木を敷居というが、敷居が消えていくことも十分考えられるからだ。

 それでも「本来の用法」を知ることは必要だ。いま実際に理解しているものが、歴史的には本来のものではないという事実は知っていた方がいい。毎年行われる国語についての調査は「本来」と「現在進行中」のズレを照らし出すためにも必要だ。