本当に悲しい知らせだ。北朝鮮に拉致された…


 本当に悲しい知らせだ。北朝鮮に拉致された横田めぐみさんの父親で、拉致被害者家族会の初代代表を務めた横田滋さんが老衰のため87歳で亡くなった。40年余りにわたって救出活動を続けたが、めぐみさんとの再会を果たさずに逝った無念さを思わずにはいられない。

 昭和52年、中学1年生だっためぐみさんが、新潟市内の学校からの帰宅途中に拉致される前日は、滋さんの誕生日だった。その日、めぐみさんからプレゼントされた櫛を大切にしてきた。

 救出活動の先頭に立ち、妻の早紀江さんと共に活動のシンボル的な存在であった滋さん。全都道府県で延べ1400回を超える講演を行った。体調を崩してからも、集会ではビデオメッセージで「めぐみちゃんと早く会いたいです」と語った。

 記者会見などからも温厚柔和で飾らない人柄がうかがえたが、それだけに救出を訴える言葉は切々と心に響くものがあった。めぐみさんとの再会を心から信じていた。

 拉致被害者の田口八重子さんの兄で家族会代表の飯塚繁雄さんは「長期間、拉致問題を放っておけば、帰国を待つ家族は1人、2人と減ってしまう。このままでいいのか、政府には考えてほしい」と危機感を露わにした。

 今年2月には、拉致被害者の有本恵子さんの母親、嘉代子さんが94歳で亡くなった。「条件を付けずに金正恩委員長と向き合う」と、被害者救出への決意を語ってきた安倍晋三首相だが、時間との戦いとなっている。