新型コロナウイルスに関わる経済的支援の…
新型コロナウイルスに関わる経済的支援のための書類が難解で複雑で、中には10枚に及ぶ枚数が必要との話もある。「書類の煩雑さ」は昔も今も変わらない。
『韓非子』(作者韓非子は紀元前234年ごろ没)には、会計報告の書類をめぐるエピソードが記録されている。何を思ったのか、ある日王が「会計報告の書類を見たい」と言いだした。宰相(首相)は「見られたくない」と思ったのだろう。ことさら詳細な書類を作成するよう部下に命じた。
宰相は「官僚が日夜努力して作成した書類です。細かくご覧下さい」と王に伝えた上で膨大な書類を見せた。目にした瞬間、王は書類を読む意欲を失っている。結局、王は読んだフリをしただけだ。
王がちゃんと読んでいないことを承知の上で、宰相は「この書類は王直々の監査を受けたもの」と部下たちに宣伝した。
平成の日本にも、似たような話があった。「夭折(ようせつ)の著名洋画家の作品が発見された」との騒ぎの中、発見者がある市に作品の寄贈を申し出た。
贋作(がんさく)との疑惑が一部で上がっていたので、市はことさら煩雑な手続きを必要とする書類を寄贈希望者に送った。間もなくその人物は、何か思うところがあったのだろう、寄贈を辞退する旨を市に伝えたという話だ。書類や手続きにまつわる話は、世の中には幾つも転がっている。最小限必要な手続きは当然だが、今回のコロナ禍については可能な限り書類は簡素にしてもらいたいと願う。