戦後のわが国の経済発展は企業の終身雇用制…
戦後のわが国の経済発展は企業の終身雇用制に支えられた面が大きい。メーカーの場合、その家族主義、愛社精神が企業内技術者の発明マインドを刺激し、優れた技術開発を可能にした。旭化成でリチウムイオン電池を開発し、ノーベル賞を受賞した吉野彰さんが典型だ。
今日、その終身雇用制の維持が怪しくなっている。技術者に関しても、相当の実績がある人を高額で雇ったり、その時々の事業にふさわしい人を調達したりする方向を打ち出す一流企業が増えてきた。
逆に、技術者の卵である博士課程修了者の雇用環境は悪く、企業の研究所廃止のニュースも少なくない。これでは企業独自の技術開発力は弱まってしまう。
トヨタ自動車とNTTが資本業務提携を発表した。トヨタは自動車生産だけではなく、NTTの通信技術を取り込んで「スマートシティー(最新技術を用いた、持続可能な都市)」を実現したいという。
巨大自動車・通信企業の提携はまれだが、国内外の一般企業の業務提携は広く行われるようになった。その結果、今後は技術の売り買いの傾向が当たり前になり、企業の技術者養成がおろそかにならないか。
新型コロナウイルス感染の世界的拡大では、サプライチェーン(部品供給網)の混乱で生産の停滞が起き、技術を外国に頼ることの弊害も改めて浮き彫りとなった。経済のグローバル化の波に乗っても、企業はこうした問題に対処する力も持っていなければならない。