語学の天才について話を聞いたり読んだり…
語学の天才について話を聞いたり読んだりすると、驚くことばかりだ。『驚くべき日本語』(集英社)という本を書いた米国生まれのユダヤ系、ロジャー・パルバースさんの日本語習得の体験もその一つ。
「ロシア語とポーランド語を学んでみると、会話に関しては、このきわめてむずかしい二つの言語より日本語のほうがはるかに簡単だと断言できます」と言い、英語に至ってはもっと難しい、と。
外国語を学ぶ場合、母語で知っている言葉を言い換えて習得していくが、音を正確に真似(まね)て記憶することが困難。パルバースさんが外国語を学ぶ時は、母語の論理を消し去り、文化的に白紙にして習得したそうだ。
それにはその国に滞在する必要があるが、現代の日本にはそんな外国人がたくさん現れてきている。ところで、語学の達人として思い浮かぶ一人が上智大学の名物教授、故野口啓祐さんだ。
入試ではディクテーション(書き取り)のための英語朗読を担当。その教授に論文の指導を受けた聖書学者・前島誠さんは、ロシアの哲学者ベルジャーエフをテーマにする(小紙「私の恩師」平成17年12月19日付)。
フランス語のテキストで学ぶことになるが、その前にこう語ったという。「外国語は何ができるのかね。英語はだめだよ、あれは犬の言葉だ。哲学をやるには使い物にならない」。英文科の教授が言うので驚いたという。英語は世界語となったが、西洋の諸言語も使い道が異なるらしい。