今年は作家の三島由紀夫が亡くなって50年目…


 今年は作家の三島由紀夫が亡くなって50年目。これを期して封印されてきたスクープ映像が映画として来月20日から公開される。豊島圭介監督の「三島由紀夫VS東大全共闘 50年目の真実」だ。

 1969年5月13日、東大駒場キャンパス900番教室に1000人を超える学生たちが集まった。東大全共闘が企画して三島に出演を依頼し、三島がそれに応じて両者のスリリングな討論会が実現した。

 同年1月、東大全共闘が占拠する安田講堂に機動隊が出動し、前者のがれきと火焔瓶、後者の催涙弾と放水の攻防で全共闘が敗北。それから間もない時で学生らは「舞台上で切腹させる」と盛り上がった。

 三島は世界的な文豪として知られ、俳優、映画監督としても活躍するスーパースター。申し出た警察の護衛を断って単身乗り込んだ。この討論をスクープしたのはTBSで、プロデューサー陣の願いから映画化が実現した。

 映像は決意表明という三島のスピーチで始まるが、意外にも全共闘と三島の思想との「接点」について語りだす。暴力を否定しないこと、全共闘が知性主義のうぬぼれの鼻をたたき割ってくれたことなど。

 思想は対立したままだが対話は成立し、三島のユーモアに誘われて笑いが起こる。三島は相手の意見をよく聞き、誠意の限りをもって返答する。作家の平野啓一郎さんら三島研究者はじめ、元楯の会や元全共闘の人々も出演し、改めて三島を読みたくなる映画だ。