英国のエリザベス女王は、ヘンリー王子と…


 英国のエリザベス女王は、ヘンリー王子と妻のメーガン妃が王室中心メンバーから退くことを認める声明を発表した。王子の意向表明を受けての王室メンバーの話し合いで決まった。

 「新たな人生を歩むという2人の希望を、家族は全面的に支持する」としたが、一方で「私たちは、彼らに王室の第一線メンバーに残り続けてもらいたかった」と、残念さもにじませた。残念さはメディアなどにも向けられていると思われる。

 他の王室メンバーに相談もなく、インスタグラムで意向を表明した王子を、ずいぶん身勝手と思う向きもあるだろう。しかし、王子をそこまで追い込む難しい背景があった。王子夫妻は2018年に結婚するが、米女優出身でアフリカ系の母を持つメーガン妃の中傷記事が絶えなかった。

 そしてヘンリー王子の脳裏によみがえったのは、パパラッチに追われてパリで交通事故死した母のダイアナ元妃の悲劇である。自分の妻や子供が同様に犠牲となるのではないかと恐れた。

 この報道で頭に浮かんだのは、エドワード8世の「王冠を賭けた恋」だ。エドワード8世は英国王位を捨てて、離婚経験のある米国人シンプソン夫人との結婚を選んだ。ナチス・ドイツは、退位後ウィンザー公爵となったエドワードに近づき、水面下の工作・接触は敗戦直前まで続いた。

 王子が王室の中心から離れ、自由な生活に入ることがもたらす波紋は小さくないだろう。女王の心痛を思わざるを得ない。