教会の鐘は「カーン、カーン(come=…


 教会の鐘は「カーン、カーン(come=来る)」と鳴り、寺のそれは「ゴーン、ゴーン(gone=去りぬ)」と聞こえる。『こころの作法』(山折哲雄著、中公新書)の中で知人による鐘のつくり話として紹介されているが、言い得て妙なところがある。

 冬至、クリスマス、仕事納めに忘年会と、師走の日々も残りわずかな時間となると無常感も漂ってくる。令和になって初の大みそかの夜は、いいニュース、悪いニュースといろいろあった日本の、去りゆく年を静かに振り返りたい。荘厳に響く百八の鐘を聞きながら、一年の垢(あか)を落として身を清める人も多かろう。

 すぐ先には真っ白にリセットされ、清々(すがすが)しい気持ちで始まる新年が控えている。綿々と続く人生の中で迎える、こちらも令和初の新年・正月だ。

 その先に待つのは、東京五輪・パラリンピックである。昭和39(1964)年東京五輪の後、日本は高度経済成長によって戦災からの大いなる復活を遂げた。

 今回の五輪も、東日本大震災からの復興をうたっての開催。さらには、昨年の西日本豪雨、今年の千葉など東日本を広範囲に襲った台風豪雨からの立ち直り途上で迎えるスポーツの祭典である。

 五輪を成功させて日本は、現代世界の課題である少子高齢化の克服に先鞭(せんべん)をつけ、未来を切り拓(ひら)くことに期待がかかる。新年を告げる鐘はその予祝である。<みかぐらを神にささげてゆたかなる年のをはりをいはひけるかな>明治天皇御製。