「夕焼の金龍飛べり冬の空」(山口青邨)…


 「夕焼の金龍飛べり冬の空」(山口青邨)。めっきり寒くなって、厚着をしている人、マスクやマフラーをしている人を見掛けるようになった。空を見上げると、どこか寂しいまでの薄い青さが広がっている。

 冬といっても、生き物たちの営みがないわけではない。俳句の歳時記を見ると、冬の動物の季語として「冬の鳥」「冬の雁(かり)」「梟(ふくろう)」「木兎(みみずく)」「鴨(かも)」「鳰(かいつぶり)」「鶴」「白鳥」など、鳥類が豊富にある。渡り鳥の季節でもあるからだろう。

 このほか、キツネやタヌキ、ウサギなども冬の季語として登場する。そして、既に日本では絶滅したオオカミも。季語だけに残っているのを見ると、不思議な気持ちになる。

 とはいえ、都会に住んでいると、こうした動物たちの姿を目撃することはあまりない。神田川などの河川で、サギやカモが羽を休めていたり、餌を狙っていたりする姿を見掛けるくらい。

 気が早いと感じるが、商店街ではクリスマスソングが聞こえてきたりする。あるスーパーでは、店頭で正月飾りの展示即売が行われていた。さすがに、まだそんな気分になれないのか、客の姿はまばらである。

 そろそろ今年を振り返ってみる時期だが、まだモラトリアムの気分でいたいのも確か。毎年この時期に、1年の世相を漢字1文字で表現する行事がある。今年を象徴する漢字は果たしてどんな字になるのか。昨年は「災」。12日の「漢字の日」に、京都・清水寺で発表される予定である。