国連創設70周年と「朝鮮動乱」


 国連は今年10月24日、創設70周年を迎える。世界の平和促進と紛争解決を明記した国連憲章を抱える国連の過去の業績に対して評価は分かれるだろうが、国連は地球レベルの諸問題を協議できる数少ない貴重な外交舞台だ。ただし、193カ国の加盟国から構成された国連では各加盟国がその国益推進のために腐心する舞台ともなる。世界の首脳たちが結集する国連総会は一見、華やかだが、その舞台裏では激しい外交戦が展開されているのだ。

 国連外交で実質的権限を握っている機関は安全保障理事会だ。もう少し厳密にいえば、米英仏露中5カ国の常任理事国だ、常任理事国は拒否権を持っているから、5カ国のうち1国でも反対すれば議題は採択されない。最近では、シリア紛争を見れば分かる。シリアのアサド大統領を支持するロシアが拒否権を行使するため、抜本的な紛争解決案は採択できない、といった具合だ。日本やドイツは、「第2次世界大戦の終戦直後に創設された国連機関は21世紀の現状に合致していない」として国連の抜本的な改革を要求しているわけだ。

 国連は過去、世界の様々な紛争解決に努力してきたが、国連の機能が一番発揮しやすい分野は開発途上国への支援だろう。今年の総会(9月25日~27日開催)では、今年で終了するミレニアム開発目標(MDGs)を継承して来年からの「持続可能な開発目標」(SDGS)が採択される予定だ。ただし、17項目からなるSDGSが採択されたとしても問題はその履行だ。その段階に入ると、加盟国間の国益争いが表面化し、履行が難しくなるケースが出てくる。例えば、気候変動問題だ。

 残念なことだが、国連機関は腐敗、堕落の巣窟でもある。最近、メディアで暴露された国連平和維持活動(PKO)要員の派遣先での性的虐待問題はその氷山の一角に過ぎない。PKO要員が2008年から13年の過去6年間で約480件の性的虐待を犯していたことが国連内部監査部の報告書で明らかになったばかりだ。

 ウィーンに本部を置く専門機関の国連工業開発機関(UNIDO)は過去、モントリオール・プロジェクト担当官が北朝鮮へ化学兵器製造可能な器材や物質を送っていたことが発覚すると、簡単な調査を実施するだけで関係者の腐敗を隠蔽する、といった具合だ。

 国連の主要課題は紛争解決だが、先述したように5カ国の常任理事国が拒否権を握っている限り、公平な調停役はあまり期待できないのが現状だ。日本の国民が国連を紛争解決の理想的機関と考えるとすれば、失望は避けられないだろう(日本は1956年、国連加盟)。

 しかし、国連70周年の歴史の中で忘れることができない出来事もある。朝鮮動乱(1950年6月25日~53年7月27日休戦)だ。韓国と北朝鮮間で朝鮮半島の主導権争いが生じた。北朝鮮が韓国領土に侵略して動乱が始まった。国連で対北非難決議が話し合われ、国連軍の派遣問題が協議された時、ソ連代表は欠席だった。そこで国連軍の派遣案は採択され、安保理決議84に基づき、マッカーサー連合国総司令官を中心とした国連軍が守勢にあった韓国軍を支援、仁川に上陸し、北軍を攻撃し、中朝国境線まで追いやることに成功した(その後、中国人民解放軍の参戦で戦況は膠着状況となり、53年7月、休戦に入った)。

 あの時、国連軍が参戦していなかったら、朝鮮半島は完全に赤化され、日本は冷戦時代、共産国と直接対峙する状況下に置かれたはずだ。そうなれば、日本のその後の発展もまったく違ったものとなっていただろう。少なくとも、韓国と日本両国は国連軍に感謝しなければならないわけだ。

(ウィーン在住)