近年、世界各地で締結されている自由貿易協定は、…
近年、世界各地で締結されている自由貿易協定(FTA)は、同一の経済秩序の下での“有志連合”を形成する2国間以上の国際協定だ。
先日、欧州連合(EU)とカナダのFTA交渉が大筋合意に達した。EUが主要先進国と締結するのは史上初めて。協定が発効すれば99%強の関税が撤廃され、双方間の物品・サービス貿易の規模は20%以上拡大すると予想される。
この間の交渉は、お互いに国内産業保護との両立が問われるが、あくまで自国の利益を追求しながら、貿易で互いの不足を補い合う。つまりウィン・ウィンの関係をいかに築くか、という前向きの姿勢が前提だ。
大筋合意によると、工業製品の関税は全廃。カナダの重要品目の乳製品と、EUの重要品目の牛肉や豚肉には関税割当制度が認められ、カナダはEUが要求した農産品の産地表示適正化を受け入れた。
現在、日本とEUとの間で行われている貿易自由化交渉でも、化学物質や飲料容器に関するEUの規制は円滑な貿易を阻む「非関税障壁」だとして、日本がEUに改善を要求している。非関税障壁問題では防戦一方だった日本が、EUに具体的な規制の是正を突き付けたわけだ。
環太平洋連携協定(TPP)についても、最後の最後まで粘り強く交渉することで、その成果が期待できる。衆院予算委員会で、野党議員から交渉脱退の可能性に関して質問が出たが、性急だと言わざるを得ない。