「旅に見る十一月の水や空」(島田みつ子)…
「旅に見る十一月の水や空」(島田みつ子)。年賀はがきの発売が1日から始まり、もう来年のことを考える時期になった。虚礼だから廃止したいという声を聞くこともあるが、普段の音信があまりない知人友人のことを思い出して懐かしい思いになることも確か。
はがきの値段も少しばかり上がったので、枚数を検討している人もいるだろう。とはいえ、それはかなりの枚数を出す人のこと。高齢になると、年々自然に減っていくのは仕方がない。
先日、定年を迎えた知人と話した時、今後はメールで済ましたいと言っていた。以前は仕事関係などで多数出していたが、定年退職となって枚数が減ってきたという。それで書くモチベーションが上がらないとのことだった。
虚礼と批判されても、年賀はがきは細々とした人間関係を維持する最後のツール。その意味で、捨て難いものがある。瞬時にやりとりできるメールは、便利ではあるけれども味気ないので、手書きの年賀状も悪くはない。「来年のことを言うと鬼が笑う」ということわざがあるが、そろそろ今年の終わりが見えてくる。
「初冬や訪んとおもふ人来り」(蕪村)。11月の季語は、冬の到来を感じさせるものが多い。昼間は暖かくても、朝夕の寒さはもはや初冬そのもの。
きょうは文化の日である。何事も合理性や利便性が追求される昨今、日本の文化を形作ってきた伝統的な風習や精神をもう一度、見詰め直すことも必要と改めて感じる。