雨模様の空を見上げながら傘を持ち、道路を…


 雨模様の空を見上げながら傘を持ち、道路を駅の方へ向かうと、同じように傘を持った人々が歩いている。梅雨の季節特有の光景だが、そこにツバメが風を切るように飛び交っている。

 ヒナの鳴き声も軒先から聞こえてくる。毎年の光景ながら、ほっとするものを感じる。それだけツバメが季節感と深く結び付いているからだろう。先日、知人が英国の作家、ワイルドの童話「幸福な王子」について話していたことを思い出した。

 よく知られているように「幸福な王子」は、ツバメが銅像の王子に代わって町の貧しい人々に、王子がまとっていた装身具などを運んでいく話だ。南国に向かった仲間に遅れたツバメは、一夜の休息のために王子の銅像に止まったのだが、それがツバメの運命を変えてしまったのである。

 有名な童話なので、誰でも一度は読んでみたことがあるだろう。王子の善意とそれに献身して死んでいくツバメの姿が、シンプルなストーリーながら心に染み入り、感動したことを覚えている。

 最近では、ペットの鳥というと、カナリアやインコのようなものからフクロウのような鳥も人気になっている。鳥の顔を見ると愛嬌があり、特にフクロウは大きな目が魅力的だ。

 それに比べると、ツバメは姿は優雅でスマートだが、意外と猛禽(もうきん)類のような鋭い目なので驚いたことがある。春に来て秋に帰るツバメは、梅雨の季節にふさわしい、本格的な夏を感じさせる鳥である。