上皇陛下が天皇退位を前に先月、伊勢神宮を…
上皇陛下が天皇退位を前に先月、伊勢神宮を参拝された時のNHKの報道がやり玉に挙がっている。「内宮は皇室の祖先の天照大神が祀られています」というくだりが、神話と史実を混同しているというのだ。
確かに他のメディアでは、例えば「皇室の祖神とされる天照大神」(読売新聞)、「皇祖神の天照大神を祭る内宮」(産経新聞)などとなっている。
NHKの上田良一会長は定例の記者会見でこのミスを認め、NHKは「内宮についての説明で一部、丁寧さを欠いていた。天皇を神格化しようといった特別な意図があったわけではない」と釈明した。通常は「皇室の祖先とされる『天照大神』」などとしているという。
NHKが何か特別な意図を持っていたとは思われない。それよりも、こういうことを取り上げて、天皇神格化を狙っていると騒ぐ一部の人々の発想とメンタリティーが、旧態依然であることに驚く。
かつて史実の裏付けがないとの理屈で建国記念の日に反対してきた人々がいた。神話そのものが前近代的で忌むべきものとの観念が刷り込まれているのだろう。
そういう人々に知ってほしいのは、日本神話を高く評価した、20世紀を代表するフランスの思想家レヴィ=ストロースの次の言葉だ。「私が人類学者として賞賛してきたのは、日本がその最も近代的な表現においても、最も遠い過去との連帯を内に秘めていることです」(『月の裏側日本文化への視角』中央公論新社)