信仰の道・紀伊山地参詣道、続く「道普請」


世界遺産登録から10年、企業・観光客ら参加

信仰の道・紀伊山地参詣道、続く「道普請」

世界遺産登録から10年となる紀伊山地参詣道の修繕作業を行うNTT西日本の社員と家族ら=11月16日、和歌山県高野町

 2014年、世界文化遺産登録から10周年を迎える「紀伊山地の霊場と参詣道」。三重、奈良、和歌山の3県にまたがり、熊野三山や高野山の宗教施設へと続く参詣道は、多くの観光客が歩くことで傷み、豪雨や台風の被害にもたびたび見舞われるため、継続的な修繕が不可欠だ。「誰でも直接、手を加えることのできる唯一の世界遺産」として近年、住民や自治体職員に加え、企業や観光客も巻き込み、参詣道を補修する「道普請」が盛んになっている。

 13年11月中旬。紅葉の見頃を迎えた和歌山・高野山で、麓から奥の院へと続く「町石道」を修繕するため、NTT西日本和歌山支社の社員と家族ら約70人が集合した。

 この日修繕したのは、傾斜が急で、台風などで表土が流れ、丸太の骨組みが露出した階段。トラックで運ばれた約2トンの土を麻袋に詰め、道幅が狭いためリレー方式で現場へと運んだ。土をまき、平らにならし、階段は格段に歩きやすくなった。

 妻と参加した男性社員は1時間ほどの作業を終え、「意外とあっという間。一般人が世界遺産の保全に関われる機会はあまりないと思うので、取り組みを続けてほしい」と満足顔で話した。

 道普請は和歌山県世界遺産センターが09年度に始め、これまで延べ約1万7000人が参加。企業の社会的責任(CSR)活動や社員研修の他、学校や有志団体からのボランティアも受け付ける。年間約60件の申し込みがあり、天候の関係などから、うち40件余りで実施される。

 大手旅行会社も世界遺産観光と道普請を組み合わせたツアーを企画し、全国の観光客が参加している。作業では土の補充に加え、側溝を埋めた土の掻き出しや、つるや草の刈り取りも行う。