オーストラリア西部にある町パースは、旅行…
オーストラリア西部にある町パースは、旅行ジャーナリストの故兼高かおるさんが「世界で一番美しい街」と称(たた)えた人気の観光都市。街並みはもちろん白い砂浜が続くビーチが自慢だ。
30年ほど前、この街に日商岩井の代表として加藤春一さんが赴任した。鉄鉱石の調達のためだった。瀬戸の陶祖、加藤藤四郎景正の分家23代目の加藤さんは、この街で陶芸クラブに属し、陶芸家らと交流。
陶芸雑誌を通して縄文土器の美しさに出会い、やがて2016年、一般社団法人縄文道研究所を設立。陶磁器と鉄鋼製品は共通するところがあったらしい。両者とも土と水と火の結晶だからだ。
パースから加藤さんが100回以上通ったというのは、ピルバラの鉄鉱山。鋼鉄の製作は鉱山開発から始まり、鉱石の採掘、鉄道による運搬、港からタンカーによる輸送、そして高炉に入れられる。
そのため地質学、採鉱学、輸送、鉄鋼の製造工程に至るまで英語で学んだという。ピルバラでゴールドラッシュがあったのは1888年から数年間だが、1960年代に大規模な鉱山開発があり、町と港、4本の鉄道も建設された。
この鉄道輸送網で今回、自動運転で鉄鉱石を運ぶ貨物列車が世界で初めて実用化された(小紙3月24日付)。往復平均800㌔を最高時速80㌔で走行する。指令所はパースにあって、ボードに運行状況が表示される。日本の技術協力によるもので、加藤さんが縄文道で称えるのも技術の道だ。