今年は東アジアの地政学的な危機が高まるとの予測で一致した3誌

◆波瀾万丈だった平成

 2019年は平成最後の年となる。そもそも平成という元号は、中国の古書『史記』の中にある「内平外成(内に平らか外成る)」、『書経』の「地平天成(地平らかに天成る)」から取った言葉で、「国の内外、天地とも平和になる」との願いがあった。しかし、30年の歩みを見れば、東日本大震災など史上類を見ない自然災害、国際紛争など平和・安寧とは程遠く、むしろ波瀾(はらん)万丈の時代だったと言えるのではなかろうか。果たして今年はどのような一年になるのであろうか。

 経済誌は年末から年始にかけて毎年恒例の新年の大予測を特集した。週刊東洋経済(18年12月29日号/19年1月5日号)は、「2019年大予測」、週刊ダイヤモンド(同)は「2019年総予測」。そして週刊エコノミスト(19年1月1・8日号)は「世界経済2019年総予測」となっている。

 このうちエコノミストは経済分野を主に分析しているのに対し、ダイヤモンドと東洋経済は経済分野に限らず、文化、スポーツなど幅広く一年のイベントを紹介。こうした特集の流れは各誌とも毎年の流れだが、中身を見ると若干の異なりを見せる。例えば、ダイヤモンドの特集の中にはこれまでの新年号になかった「地政学」という項目がある。そこには、「目まぐるしい国際情勢の変化が国家や金融市場を振り回す今、『地政学』が存在感を高めている。国土の地理的な位置や形が国家の政治、経済、軍事的な動向に与える影響を分析するこの地政学が、激動の2019年でも羅針盤となる」と綴る。

◆米中関係さらに悪化

 地政学的な視点で今年の日本を見詰めると、ポイントになるのは東アジアの情勢。とりわけ中国と朝鮮半島ということになろう。

 現在、中国は米国との間で貿易戦争が激しさを増している。その動向について経済誌は、「もはや米中対立の本質は通商問題ではない。将来の飯の種となる技術覇権、国家の安全保障を支える軍事覇権の争いへ発展しており、米中関係の修復は不可能だ」(ダイヤモンド)、「(米中貿易摩擦の)結論を先に言えば、米国の対中制裁はより深く拡大していくことになりそうだ。…。米国が経済、テクノロジー、軍事面でその覇権を脅かす中国を放っておくことはない」(東洋経済)と分析。さらにエコノミストは、「トランプ政権は今後、次世代技術や関連業種、軍事転用が可能な技術では中国の締め出しを進めるだろう。…。(米中の)相互依存の解消が加速した米中関係が、新冷戦へと転化する可能性は払拭(ふっしょく)できないだろう」と3誌とも米中関係のさらなる悪化を予測する。

◆好転望めぬ日韓関係

 一方、朝鮮半島に関しても楽観的な見方はない。

 東洋経済は「18年2月の平昌五輪以降、北朝鮮との融和を前面に打ち出し、米国との仲介役を果たそうとしてきた。だが、その韓国の外交当局が北朝鮮との十分なパイプ役を築けず首脳会談が危ぶまれること自体が、半島情勢の不透明さを象徴する」とした上で、韓国経済については「北朝鮮の非核化もスムーズには進む状況ではなく、自国経済の回復も思うようにいかない。17年5月に就任した文大統領の任期は3年半。19年は早々にレームダック化する可能性がある」と予測。

 また、ダイヤモンドでは武藤正敏・元韓国特命全権大使が登場。「(韓国大法院の)徴用工判決は日韓関係の根幹を揺るがすもので、韓国が対日政策を変えない限り関係修復はないだろう。今後、同判決が立て続けに出る恐れがあり、19年3月には3・1独立運動100周年を迎え、韓国の国民感情が高まりかねない。当面、日韓関係の好転は望み薄だ」と悲観的であり、現政権に対しても、「文政権の政策は、韓国を日本と引き離したい北朝鮮の思うつぼだ。ただ、韓国では保守陣営は壊滅状態で文政権をけん制できていない。文政権の政策転換には、経済停滞で低下している支持率が鍵となる」と日韓関係の限界を吐露する。

 米国第一主義を掲げるトランプ大統領、西太平洋の覇権を狙う習近平国家主席、日韓分断を狙う金正恩朝鮮労働党委員長とそれに乗る文在寅大統領。日本を取り巻く国際情勢は複雑な様相を呈していくが、日本は知恵を使ってリスク回避を図らねばならない一年になりそうだ。

(湯朝 肇)