“風の又三郎”が暴れ回っているように、…


 “風の又三郎”が暴れ回っているように、トランプ大統領の米国は次から次へと難題が襲来している。その一つが、治安悪化と貧困が深刻な中米ホンジュラスなどから2000人以上の集団が米国移住を目指して北上している問題である。

 メキシコからの不法移民対策では、国境への壁建設を主張してきた。今回の事態を前にトランプ氏はツイッター投稿で、メキシコに不法移民の襲来阻止を求め「もしできなければ、米軍を動員して南部国境を閉鎖する」と迫っている。

 移民問題が長年、米国の国論を二分してきた中、左翼勢力や野党民主党は不法移民への市民権付与や移民の大量受け入れを主張してきた。

 だが、それが必ずしも人道的見地からではないとの指摘(小紙連載「米国の分断」第3部7=21日付)には考えさせられる。「真の狙いは、移民を大量に受け入れて民主党を支持する有権者を増や」すことにあるというのだ。

 少数派の「マイノリティー人口を増やすことで、政治ではマジョリティー(多数派)の座を占めるという『マイノリティー・マジョリティー戦略』」なる用語で示す移民の政治利用についての解説は興味深い。

 ほとんどが“反トランプ派”とみられる米国のメディア状況を色濃く反映する日本のメディアからは、トランプ氏の言動を茶化すなどの一面的な報道はあっても、こういう深慮遠謀の解明や洞察に富む複眼的視点がなかなか提示されないのは残念である。