写真展「路上から世界を変えていく」


現代を考察した5人の作家

写真展「路上から世界を変えていく」

「日本の新進作家Vol.12 路上から世界を変えていく」大森克己<すべては初めて起こる>福島市、福島2011年

 東京・目黒区の東京都写真美術館で「路上から世界を変えていく」展が開かれている(2014年1月26日まで)。路上を舞台にしたスナップショットの名作は数々あったが、ここで取りあげられた作家たちは、なにげない路上を舞台にしながら、ものの見方や感じ方を変えて、新たなイメージを提示している。

 日本の新進作家展シリーズの12回目。新進作家と言っても新人ではなく、すでに評価を得てきたベテランたちだ。日常から出発して、今の時代を考察し、自分の位置を確認しようとしている。

 大森克己、糸崎公朗、鍛治谷直記、林ナツミ、津田隆志の5氏である。

 大森氏の「すべては初めて起こる」シリーズは2011年4月に撮影された作品で、サクラの開花とともに自宅のある浦安から福島へと旅をして制作。東北大震災のあった直後で、うららかな明るい作品だが、福島での災厄を暗示するピンクの光が浮いている。

 林ナツミさんの「本日の浮遊」の舞台は、住宅地の路上や駅のホームや繁華街の空き地で、浮遊した自分自身をとらえたシリーズ。空間にふわっと浮いているのだ。そう見えるのはジャンプしたからで、一枚のために300回も跳ぶという。「地に足がついていない」と言われたそうだが、それをポジティブに表現している。

 糸崎氏は路上の建物を立体に表現した「フォトモ」や路上をフィールドとした作品を、鍛治谷氏は地方都市にある歓楽街の看板など風景の断片を、津田氏は全国各地のテントの張れそうな場所を追って撮影。風景を捉えたアイデアが面白い。(岳)