「ちょっと待って」という言葉は頻繁に…


 「ちょっと待って」という言葉は頻繁に使われる。この言葉自体には間違ったところは少しもない。が、昨年暮れに新幹線の台車に亀裂が入ったアクシデントでは、大きな問題を引き起こした。

 異変を察知した側と東京の指令員との間でやりとりがあった中で、指令員が「ちょっと待って」と現場に伝えた。それがアクシデントの原因の一つだったことが、JR西日本の調査で明らかになった。

 指令員は「この電話をちょっと待ってください」という意味で言ったのだが、現場は「点検の準備が始まったので、もうちょっと待ってほしい」と受け止めた。

 双方に悪意も曲解もあろうはずがない。「伝わるだろう」と指令員は思ったのだし、現場は「点検の準備の話」と考えたに違いない。

 何を待つのか、はっきり示した方がよかったのだろうが、日々の行動を振り返れば、このように明示することなく会話を交わした結果、食い違ったり、食い違わなかったりしているのが実態だ。今回の食い違いの背景には、運行停止に関する判断基準があいまいで、判断を相互に依存する状況に陥っていたことがある。

 アクシデントの結果は「不幸中の幸い」だったが、場合によっては人命にも関わる可能性があった。「あり得ること」だが、「あってはならない」ことでもあった。対象が何であるのかを明確にした上で会話するクセをつけておくのがよい、とわが身も含めて振り返ってみる必要がありそうだ。