沖縄の西表島へ行った。急な予定だったが…


 沖縄の西表島へ行った。急な予定だったが、なかなか訪れる機会もないだろうと思って、予備知識も何もないまま羽田を出発した。那覇で乗り換えて石垣島へ。そこから小型の高速船で50分で西表島に到着した。沖縄本島の南西470㌔、台湾の東200㌔の位置にあり、島の北方150㌔には尖閣諸島がある。

 島の大部分がジャングルと言われる通り、濃厚な緑が広がっている。有名なイリオモテヤマネコはわずかに100匹程度、森の中で生息している。地元の人もめったに目撃することはない。

 浦内川を船で遡ると、映画で見るようなジャングルの光景が続く。日本本土の風景とは異質だ。

 現地ガイドの勧めで、浦内川支流にある炭鉱跡を見学。「現地の人が見学を勧めるぐらいだから、ハブは出ないだろう」と信じて、密林の中の細道をしばらく行くと、慰霊碑が立っていた。建物跡も一部残る。炭鉱は明治中期から昭和10年代まで操業していた。

 案内板を見ると、手配師らにそそのかされてこの地に送り込まれた労働者の悲惨な生活がうかがえる。現地住民は人口が少なく、外から労働者を導入するしかなかったようだ。

 過酷な労働に耐え切れず逃亡を図っても、島ゆえに逃げ切ることができない。結局、山中で死亡するか、炭鉱に連れ戻されるしかない。タコ部屋と呼ばれる強制労働の中、マラリアに罹(かか)って病死するケースも多かった。緑の島の悲惨な歴史の一齣(ひとこま)もはっきり残っている。