中国人の水墨画家・傅益瑤さんは1980年に…


 中国人の水墨画家・傅益瑤(ふえきよう)さんは1980年に来日し、東京藝術大学大学院で平山郁夫に師事した。作品は延暦寺国宝殿に収められた「仏教東漸図」をはじめ多数あるが、一貫して描いてきたのは日本各地の祭り。

 画集『日本の祭り』には四十数点収録されたが、昨年100作目の「徳島の阿波おどり」を完成させた。取材の際には飛び入り参加して“祭り女”の本領を発揮し、昨年11月にはNHKの「日曜美術館」でも紹介された。

 祭りに関する一連の業績は母国中国からも高く評価され、中国文化部芸術研究院から中国の無形文化財“端午の節句”を絵画にするプロジェクトを依頼されて2015年に作品を完成させた。長さ14㍍、幅2㍍の大作だ。

 この作品が今、中国文化センター(東京・虎ノ門)で日本の祭り作品とともに展示されている。中国の端午の節句は楚の詩人で政治家、屈原にちなむもので、5月5日がその命日。死を悼んで村人が粽(ちまき)を供えたのが始まりだ。

 「端午頌」には山河の風景の中に屈原はじめ、祭祀、龍船競争、粽作り、踊りなどが描かれ、1000人にも及ぶ人々が登場する。屈原は、傅さんの父親で画家の傅抱石が愛着を抱いていた題材で、傅さんは屈原の故郷、湖北省に取材した。

 「祭りには現実には見ることができない人間の感情があり、神々しい哲学があります。日本に来て端午の節句があることを知り幸せでした」と語る。4月28日まで。