比レイテ島タクロバン、治療の遅れ目立つ


国境なき医師団の渥美さん「手術中にも停電頻発」

比レイテ島タクロバン、治療の遅れ目立つ

フィリピン・レイテ島のタクロバンで少年の治療に当たる渥美智晶さん(右)=11月28日(国境なき医師団提供)

 台風30号の直撃で大きな被害が出たフィリピン・レイテ島タクロバンに国際医療支援団体「国境なき医師団」の一員として派遣された外科医の渥美智晶さん(37)が帰国し、「手術中にも停電が頻発した。初期治療も受けられない人もまだ大勢いる」と、被災から1カ月がたった今も危機が続いている現状を説明した。東京都内で4日、時事通信の取材に語った。

 長崎県諫早市の病院に勤務する渥美さんは、台風のフィリピン通過9日後の11月17日にセブ島入りし、翌18日、空路でタクロバンに到着。12月3日までの約2週間、回診と手術に当たった。

 拠点となったのは空港から車で30分ほどの3階建ての民間病院。着いた時には「めちゃくちゃな状態」で、暴風により屋根は吹き飛び、室内は大半の窓ガラスが割れてがれきの山と化していた。このため、他のチームが敷地内に巨大なテントを設置して救急処置室と入院施設を造り、渥美さんはかろうじて破壊を免れた病院の一室で手術を行った。

 朝6時に起床し、9時には手術を開始。1日7、8件、時には10件をこなし、合間に回診した。患者には子どもが目立った。「治療が受けられなかったために手足の傷が悪化した人が大半。感染症がひどく切断せざるを得ないケースもあった」と振り返る。

 インフラの復旧はほとんど進まず、病院には発電機が持ち込まれたものの、手術中に停電し、真っ暗になることもしばしば。持参したヘッドライトで患部を照らし、無事に終えたこともあったという。

 「交通アクセスが悪い遠隔地では、いまだに初期治療も受けられない人が相当いる。下痢の症状を示す人もいたが、診断キットがないため感染症かどうかも現地では確認ができない。今後も患者は増えることが予想され、対策が必要だ」と訴えた。