「台風の来るの来ぬのと稲の花」(高浜虚子)…


 「台風の来るの来ぬのと稲の花」(高浜虚子)。そろそろ稲の花が咲く季節。とはいえ、稲の花はそれほど目立たない。

 稲というと、季節ごとにその生長ぶりが祭事や神事に関わっている。例えば、早乙女が行う田植えの神事、垂れた稲穂の収穫を祝う秋の祭りなど。俳句に詠まれたりするので、割合知られている。

 稲畑汀子編『ホトトギス新歳時記』には、稲の花について「穎から白い糸のようなものが垂れている。それが花である」とある。「穎」とは稲の穂先のこと。花としては、美しい観賞植物にはかなわないだろう。しかし、稲の実は日本人の食生活に欠かせないコメである。つつましいけれど貴重な花と言ってもよい。

 『ホトトギス新歳時記』では「農家では早稲を多く作るとか、晩稲を多くするとかして花期が台風季をのがれるように苦心する」。台風はちょうど開花から実りの時期に集中する。

 「台風の余波時なしの雨が降る」(星野立子)。今年は台風の当たり年なのか、リオデジャネイロ五輪が終わったと思ったら、次々と南海で発生している。その中には、日本列島を直撃し、大きな被害を与えたケースも。ここ数日も台風10号などが接近するので警戒が必要だ。

 日本列島には地震や台風などによる自然の災害が多い。だが大きな被害を受けながらも、たくましく生き抜いてきたのも事実。自然との共生思想が日本文化に息づいていることを実感させられるのである。