誰かの旅のエッセーに「旅の印象には意外と…
誰かの旅のエッセーに「旅の印象には意外と泊まった宿のことしか残っていない」というのがあった。自分の旅を振り返っても結構、当てはまるところがある。どんな宿に泊まるかで、旅の印象は大きく左右される。
もちろん高級ホテルは、快適でリッチな気分になれる。しかし、それだけの印象しか残らないことも多い。それに比べ意外と濃密な記憶が蘇ってくるのは、地方の日本旅館や民宿だ。
夕食後宿の主人が部屋に来て、色々と土地の話をしてくれた岩手県の日本旅館。北海道の民宿では、そろそろ寝ようかと思っていた時、「済みませんが相部屋をお願いできませんか」と言われ、セールスマン風の男性と相部屋となった。その時は、女主人が差し入れてくれた焼酎を男性と飲んで世間話をした。もう30年近く前のことだ。
昨年中央アジアのキルギスを旅し、首都ビシケクの民宿に一泊した。たまたまオーナーの女性が、日本文化に関心のある人で、居間に招かれ話に花が咲いた。
政府は国家戦略特区でマンションや民間住宅の空き部屋に旅行者を有料で泊める民泊を2泊3日の短期間から認める方針という。外国人旅行者増加への対応策である。
民宿のようなオーナーとの交流はあまり期待できないだろうが、外国人旅行者には旅のプランを合理的に立てやすくなるし、日本人の生活空間の一端も体験できる。最初からあまり宿にこだわらない旅行者には重宝だろう。