北朝鮮ナンバー2張成沢氏に失脚説

韓国情報機関、国会で報告

先月側近2人公開処刑

 【ソウル・上田勇実】韓国の情報機関・国家情報院の高位幹部は3日、国会情報委員会で北朝鮮の最高指導者・金正恩第1書記の後見人で事実上のナンバー2だった張成沢・朝鮮労働党行政部長が失脚した可能性が濃厚で、同部長の腹心2人が先月下旬ごろ公開処刑されたと報告した。報告を受けた与野党の同委幹事が明らかにした。これが事実とすれば北朝鮮内部の権力構図に大きな変動が起こる可能性があり、韓半島情勢にも少なからぬ影響を与えそうだ。

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 報告によると、スパイ摘発などを行う国家安全保衛部が今年に入り、張部長の腹心が不正を働いたとする情報を入手して捜査を開始するなど、一部で牽制(けんせい)の雰囲気が広がったため、張部長自身も公開活動を自制してきた。実際、張部長が金第1書記の現地指導に同行した回数は昨年の約半分に減っていた。

 先月下旬、張部長の腹心である同部のリ・リョンハ第1副部長とチャン・スギル副部長が公開処刑。内部では「不正など反党(反労働党)容疑」と伝えられ、その後「金第1書記に対する絶対忠誠を強調する思想教育が実施」され、「張部長も失脚した可能性が濃厚」だという。

 また張部長は国防委員会副委員長をはじめ全ての職責から外され、行政部も機能停止あるいは解体された可能性が高く、現在、張部長夫人で故金正日総書記の妹である金敬姫(慶喜)・党軽工業部長とも所在把握ができずにいるという。

 張部長は2011年12月の金総書記死去後、金部長と共に金第1書記体制を最も近くで支え、年齢が若く基盤も弱い金第1書記に代わって事実上の摂政を行ってきたとみられている。

 しかし、昨年12月の長距離弾道ミサイル発射や今年2月の3回目の核実験をめぐり張部長と極めて近かった崔竜海・軍総政治局長の強硬路線と対立。軍の人事にも介入できなくなるなど「張摂政」に異変が起きていた(本紙7月11日付1面既報)。失脚が事実なら崔局長が金第1書記を説得して張部長追い出しを図った可能性もある。

 ただ、失脚説には否定的な見方もある。ある在韓情報筋は「金第1書記、張成沢部長、金敬姫部長は北朝鮮最高権力に位置する一枚岩で3人は運命共同体。張部長を失脚させた場合、権力維持そのものが揺らぐ恐れがあるため、そこまで踏み切るか疑問」と述べた。

 また別の情報筋は「公開処刑は張部長に対する警告の意味が強いのではないか。張部長の了承下で行われたみそぎだった可能性もある」と指摘した。