文・安両氏が韓国次期大統領選へ始動
来年6月地方選が試金石に
昨年の大統領選で野党系候補として一本化を試みた民主党の文在寅議員と無所属の安哲秀議員が4年後の次期大統領選に向け事実上動きだした。まずは来年6月の統一地方選でどのような存在感を示せるかが試金石になりそうだ。
(ソウル・上田勇実)
左派路線、政治基盤に差も
文議員はこのほど記者団に対し「2017年政権交代のため最善を尽くす」「(大統領選出馬に)執着はしないが、避ける考えもない」などと述べ、17年の次期大統領選に再度挑戦する考えを示した。
また文議員は近々出版予定の著書「1219(大統領選投開票日の12月19日の意)、終わりが始まりだ」の中で「私と民主党は再び希望と信頼を作り出したい」と記し、再出馬が民主党を基盤としたものであることを示唆した。
文議員は朴槿恵候補(当時)との一騎打ちに僅差で敗れた後、政治的言動を自粛してきたが、1年が経過し本格的に活動を始めた形だ。
一方、安議員は新党結成に向けた組織「国民と共にある新しい政治推進委員会」の発足を宣言しながら「古い枠にはこれ以上何も入れることができない。新しい政治勢力が出てくるしかない」と語った。
2人は昨年の大統領選で野党系候補の一本化を目指し、最終的な候補となった文氏は一本化の“効果”で朴氏と大接戦を演じた。今回の次期大統領選を視野に入れた2人の動きは、保守政治勢力にとって警戒せざるを得ないものだ。
文議員は盧武鉉元大統領の最側近で民主党で今でも多数派を占める親盧グループの座長格。北朝鮮には融和的で知られ、しばらくマスコミをにぎわせていた07年南北首脳会談議事録の違法管理問題で検察から聴取されている。
ただ、予算案処理などをめぐり国会紛糾が続き、民主党に対する世論も厳しいため、党内からは執行部や主流派の非親盧グループを中心に文議員の動きについて「今それどころではない」という批判的な声も上がっている。
これに対し安議員が立ち上げる「安新党」は早くも高い支持率を得ている。ある世論調査では与党セヌリ党が40・2%で、その次に「安新党」が32・2%。民主党の13・6%を大幅に上回っている。
安議員は基本的には左派路線だが、「産業化勢力(与党などの保守派)も民主化勢力(民主党などの左派)も尊重する相手で、敵ではない」とし、民主党を母体とする文議員と比べ幅広い政治基盤を想定しているようだ。
だが、理想主義者であるがゆえ現実政治の壁にぶつかった時には脆(もろ)いという見方もあり、新党が結成されても政治手腕は未知数だ。
昨年の候補一本化では、純粋無垢(むく)な安陣営が権謀術数に長(た)けた文陣営にしてやられたという印象も与えたが、今回はどうなることやら…。まずは来年6月の地方選が両議員にとって今後を占う試金石になる。