日本のトンネル技術は世界に冠たるものだが…


 日本のトンネル技術は世界に冠たるものだが、ヨーロッパのそれも同様の実績がある。スイスで、アルプス山脈を南北に貫く鉄道トンネル「ゴッタルドトンネル」が完成した。

 スイス中部エルストフェルトからイタリア国境近くの南部ボディオまでの山岳地帯を貫く。全長は57㌔で、日本の青函トンネル(53・85㌔)を抜いて世界最長だ。先ごろ式典が開かれドイツのメルケル首相ら欧州6カ国の首脳が駆けつけた。

 青函トンネルは湧き水対策が第一だったが、こちらはアルプス山脈の固い岩盤が相手で、岩盤からしみ出る水や高い気圧、それに気温が45度にも達する過酷な状況を克服し、完成までに17年かけた。

 欧州連合(EU)が資金や技術面で支援、協力し、約1兆3500億円が費やされた。目の前の難民対策、経済政策では、EU各国の足並みが乱れているが、先々を見通したインフラ整備では、その結束力を見せつけた。

 「ヨーロッパの未来の道筋を切り開いた」(オランド仏大統領)とも。来年末にはドイツ、スイス、イタリアの3カ国を縦断する列車の運行も始まり、貨物列車による物流が大幅に伸びる予定だ。

 スイスでトンネルと言えば、ジュネーブ郊外の欧州合同原子核研究所に1周27㌔の素粒子加速装置のトンネルがある。ここでは新粒子発見が相次ぎ、素粒子物理学の牽引(けんいん)役を果たしている。欧州の英知を結集して造られ、こちらも世界的に知られている。