STAP細胞騒動から2年。今年刊行された…


 STAP細胞騒動から2年。今年刊行された『あの日』と題する手記以来5カ月、小保方晴子さんがメディアに登場した。瀬戸内寂聴さんとの対談(「婦人公論」6月14日号)だ。

 瀬戸内さんの意向による企画のようだが、内容はお粗末だ。「あなたがされたことはいじめ」と瀬戸内さんはまず決めつける。いささかも落ち度がないのに、世間から一方的に叩(たた)かれたのだから、という論理だ。

 故意かミスかは別として、STAP細胞が再現されなかった以上、小保方さんに一定の非はあるはずなのだが、なぜかそのことは棚上げして被害者と決めつける。

 小保方さんが心身ともに痛めつけられたのは事実だから、その部分の心情を語るのは当然だ。だが奇妙なことに、この対談では科学の問題が全く触れられていない。小保方さん自身も、自分が起こした騒動に少しも向き合おうとしていない。

 「事実に向き合ったら負け」との認識を2人が共有し合っている様子だけは誌面から伝わってくる。だから心情論に逃げ込むしかない。

 利口な小保方さんのことだから、今後、科学者としての道が厳しいことは重々承知しているだろう。「科学者として騒動に向き合う」のはこの際諦めて、それ以外の道に活路を見いだそうと決めたのかもしれない。事実を直視するところから本来は始めるべきだったのだが、あえてそれを放棄して「何事もなかった」としてしまったのは残念だ。