地球温暖化の影響、フランスではワインにも
「伝統の味を守れなくなる」と生産者、対応迫られる産地
ワイン大国フランスで、地球温暖化に伴うブドウの品質の変化が確認され、産地が対応を迫られている。気温上昇が続けば近い将来に高品質のワインを生み出すブドウを国内で生産できなくなる懸念があるほか、かつてはワイン生産に適さなかったはずの畑を国外で買い付ける事業者も出てきた。生産者は「伝統の味を守れなくなる」と国際社会の対策に望みをつないでいる。
「今年のブドウは過去70年間で最も出来がよかった」。仏南東部タンレルミタージュ村でワイン生産を営むグザビエ・ゴマールさん(57)は、温暖化が今のところは好影響をもたらしていると話す。ブドウは一般に気温が上がれば酸味が落ちて糖度が増す傾向があり、ワインの芳醇(ほうじゅん)な味わいをもたらす例もあるためだ。
しかし、気温上昇に歯止めがかからなければ質の劣化は避けられない。ゴマールさんは「干ばつ対策を真剣に検討する必要が出てくる。ワインの味も大きく変わるだろう」と懸念を口にした。
国内のブドウ産地では平均気温の上昇に伴い、30年前と比べ収穫時期が2~3週間早まったと言われる。地元メディアによれば、猛暑だった2015年は南部で、糖度の上昇に伴いアルコール度数が14度と通常より2度ほど高いワインが醸造された。仏ワインメーカーのテタンジェは、気温上昇を受けて良質のブドウが収穫できるようになった英国の産地を買収、年30万本を現地で生産する計画という。
仏国立農業研究所(INRA)は3年前に、温暖化に対応するためのブドウの品種改良や栽培方法の開発に着手した。16年春にはワイン産地の南西部ボルドーで研究成果を発表する予定だ。
フランスは国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)の議長国として、気温上昇を2度以内に抑える目標を掲げた「パリ協定」の合意を主導。INRAの研究者は「2度程度の気温上昇なら何とか対応できても、それ以上になればブドウ産地の地図は大きく様変わりする」と話し、目標達成の重要性を強調した。(パリ時事)