「ニュートリノ」は+や-の電荷を持たないし…
「ニュートリノ」は+や-の電荷を持たないし、質量もないと思われ、長年“幽霊粒子”と呼ばれてきた。どんな物質も突き抜け、捉えるのに困難を極めた。
そんなニュートリノ研究に果敢に挑戦した梶田隆章・東京大宇宙線研究所長(56)が今年のノーベル物理学賞受賞者に決まった。2002年に同賞を受賞した小柴昌俊東大特別栄誉教授の下で学び、実験のプロになった。
ノーベル賞受賞の翌年、名誉都民に選ばれた小柴氏には、その顕彰式の後に話をうかがったことがある。同氏もニュートリノ検出に試行錯誤した末に栄冠に輝いたが、「国民の税金を使って、役に立たない研究をやってるんだと、身の細る思いをしていたが、今回、都民の皆さんには『それで良かった』と言っていただけたんだと思う」とユーモアと笑顔を絶やさなかった。謙虚で日本と学問を愛する人だ。
残念ながら梶田氏の話を聞いたことはないが、小柴氏の薫陶を受け、厳しく訓練された人だけに、常に前向き、プラス思考の人だと聞いた。
今回の授賞対象となったのは「ニュートリノ振動」という現象の発見。小柴氏が実験に使った装置を改良し、大気のニュートリノを観測、同粒子が質量を持つことを確認した。膨大な観測データが必要だった。
ニュートリノを含む素粒子物理学は、わが国の得意分野だ。湯川秀樹博士らの下からノーベル賞級学者を多く輩出してきた。後進もどんどん育ってほしい。