10億人を寄生虫病から救った特効薬へ
ノーベル医学生理学賞に大村智・北里大特別栄誉教授
ノーベル医学生理学賞の受賞が決まった大村智・北里大特別栄誉教授は、長年にわたり微生物が作る有用な化合物を探求してきた。中でも1979年に発見された「エバーメクチン」は、アフリカや東南アジア、中南米など熱帯域に住む10億人もの人々を、寄生虫病から救う特効薬へとつながった。
大村さんは73年、大手製薬会社メルク社と共同研究を開始。さまざまな微生物が作る抗生物質などの探索を進める中で、静岡県内の土壌から分離された微生物が生産するエバーメクチンを発見した。
この物質は線虫などの神経系をまひさせる一方、哺乳類の神経系には影響しない特性があることが分かった。エバーメクチンを基に、さらに効果を強めた「イベルメクチン」は家畜の抗寄生虫薬として世界的なベストセラーとなった。
さらに、失明につながるオンコセルカ症など、熱帯域にまん延する寄生虫病にも効果があることが判明した。
世界保健機関(WHO)はメルク社の協力を得て、アフリカなど寄生虫病に苦しむ地域にイベルメクチンを配布。2012年までに、延べ10億人以上に無償提供された。WHOによると、西アフリカでは02年までに少なくとも4000万人のオンコセルカ症の感染を予防。