理研など、iPS移植1年後「経過は良好」
世界初の目難病「滲出型加齢黄斑変性」手術
人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った目の難病患者への移植手術から1年が経過したのを機に、理化学研究所多細胞システム形成研究センター(神戸市)と先端医療振興財団(同)が2日、神戸市内で記者会見し、患者の術後経過は順調で、安全性についても「良好に経過している」と明らかにした。
理研などは昨年9月、網膜の下に異常な血管が生じて視力が低下する難病「滲出(しんしゅつ)型加齢黄斑変性」を患う兵庫県内の70代女性の手術を実施。女性本人の皮膚細胞から作ったiPS細胞を網膜の細胞に変えて網膜シートを移植する世界初の手術を行った。
術後、網膜のむくみは減少し、拒絶反応や細胞異常、腫瘍発生もなかった。視力は術前とあまり変わらない0・1程度を維持している。女性は「明るく見えるようになり、見える範囲も広がったように感じる。治療を受けて良かった」と話しているという。今後、3年間の追跡調査を実施する。
栗本康夫先端医療センター病院眼科統括部長は「1年間何も起こらなくて正直ほっとしている」と安堵(あんど)の表情。高橋政代理研プロジェクトリーダーは「結果は予想通り。早く次の治療に移っていきたい」と意欲を見せた。
2例目については、患者のiPS細胞から複数の遺伝子変異が見つかったことから移植を中断。京都大がストックしている他人のiPS細胞を使用する方針を改めて示した。