福島県の旧・田島町から国道121号を下って…


 福島県の旧・田島町から国道121号を下って352号に入り、南西に向かって檜枝岐(ひのえまた)方面にドライブしたことがある。山中の道だが舗装されて快適で、山また山と続く。中山トンネルを越えると、旧・舘岩村に入る。

 ここは2006年に田島町、伊南村、南郷村と合併して南会津町となったが、町の雰囲気はどこにもない。立ち寄ったのが高杖(たかつえ)高原である。ホテルやスキー場があって、ここだけ都会の香りがした。

 といっても標高1000㍍の広大な高原で、北東に丸山(1552㍍)、遠く南には荒海山(1580㍍)や田代山(1926㍍)が連なっている。眺めているだけで飽きがこない。壮大な景色に息をのんで言葉が出なかった。

 「ふくしまの美景百景」の一つだ。夏になるとスキー場にソバの種がまかれ、一面のソバ畑になる。地元紙によると、いま開花期を迎えて花が見ごろだ。高原は白い花々で覆われて絨毯のようだ。

 ソバ畑を歩く「そばウォーク」のイベントも開かれ、夜間のライトアップも行われている。写真コンテストの作品も募集中だ。夏に近くの「道の駅」で天ぷらそばを味わったが、腕自慢の職人が作ったらしく絶品だった。

 詩人の西脇順三郎は、エッセー「われ、素朴を愛す」の中で「ソバは私には田園のシンボルである」と言い、「『さびしさ』を食うのである」と語った。ここにはソバ畑があるが爽やかで、どこか華やいでいる。