岐阜県郡上市八幡町は長良川と吉田川が合流…
岐阜県郡上市八幡町は長良川と吉田川が合流する盆地にあって、古い街並みや水路の残る城下町である。ここの盆踊りは7月16日から9月10日まで各地区で行われ、延べ四十数日に及ぶ。
訪れる観光客の数は数十万に上る。このように盛んになったきっかけは寛永年間(1624~44)、八幡藩主遠藤但馬守慶隆が、藩内の民の融和を図るため、士農工商の枠を外して歌と踊りを保護したことによるという。
「かわさき」「三百」「春駒」など演目は10種類。踊りは女性的で優美だ。伊勢地方のものが移入され、アレンジされて出来上がったらしい。「春駒」はここが馬の取引の盛んなところから生まれた。
「かわさき」は馬取引に来た他国人と遊女との別れを詠んでいる。クライマックスが8月13日から16日まで4日間開かれる盂蘭盆会で、夜通し踊った。「徹夜踊り」と言われるゆえんだ。
気分に変化をつけるために、いろいろ演目を変えて踊る。俳人の故・能村登四郎はこれを観て「あれは郡上一揆の時のエネルギーがそのまま生きているのを思わせる」と記した(『秀句十二か月』)。
長田暁二さんと千藤幸蔵さんの『日本民謡事典』によると、「かわさき」は昭和10(1935)年、岐阜県出身の鶯芸者豆千代がコロムビアのレコードに吹き込むことで、全国的に歌われる民謡になった。題名の「かわさき」は、宝暦年間(1751~64)にこれを作った藩士河崎の名から来ているそうだ。