平成26年の日本人の平均寿命が男女とも過去…


 平成26年の日本人の平均寿命が男女とも過去最高となった。前年に初めて80歳を超えた男性が80・50歳とさらに伸ばし、香港(81・17歳)、アイスランド(80・8歳)に続き、スイスなどと並ぶ世界3位。女性は86・83歳(前年86・61歳)で3年連続で長寿世界一に(小紙7月31日付)。

 織田信長が「人間五十年、下天のうちをくらぶれば」と謡って果ててから終戦直後まで、日本人は長い間、人生50年の感覚で生きてきたという。それが戦後70年の今、人生80年時代に入った。

 宗教思想家の山折哲雄氏はその人生モデルの混乱を指摘する(読売「地球を読む」平成22年8月15日付)。人生50年時代は「死生観」という考え方が人生モデルだった。「死を覚悟する心構えこそが生の豊かさをもたらす」という観念が陰で支えてきた。

 それが今は「生と死のあいだに病と老いの問題が割りこんできて」この死生観モデルが崩壊の危機に。「年金、医療、介護の問題としてあらたに浮上し、政治も経済も適切な対応策を打てない状況」となり混迷を深める。

 社会はこの先に「死生観」に代わる人生80年時代にふさわしい人生モデルを見つけることが必要と。医師で作家の久坂部羊氏は、そのヒントに「方丈記や徒然草の時代から脈々と続く、達観の考え方」を勧める(読売「こころ」同8月26日付夕刊)。

 われわれの人生80年を生きる心構えの方はまだ追い付かないようである。