火山の噴煙を思わす煙と飛び散る瓦礫。…


 火山の噴煙を思わす煙と飛び散る瓦礫。イスラム過激派「イスラム国」は、シリアの世界遺産パルミラ近くにあるイスラム教聖者の墓を破壊した画像をインターネット上に掲載した。

 イスラム教徒がなぜ、イスラム教の聖者の墓を爆破するのか、理解し難い。しかし、聖者の墓も「偶像崇拝」に繋がるとして、過激な根本主義者には破壊の対象となるのだという。

 穏健なイスラム・スンニ派が多い、中央アジアのウズベキスタンを訪ねると、聖者の墓がいくつもある。その周りを3周すれば願い事が叶うというような御利益伝説も多い。

 イスラム研究者の竹下政孝・東京大学名誉教授によると、イスラムでは聖者崇拝ではなく、聖者敬愛とした方が正確だ。崇拝するのは神のみであって、聖者は神と信者の「仲介者」にすぎないからである。

 竹下名誉教授は、その分かりやすい例として、サマルカンドのアフラシャブの丘の麓にあるシャーヒズィンダ廟群を挙げる。サマルカンド・ブルーの美しい建築を見ることができるこの廟群は、この地にやって来て殉教したアラブの聖者の廟があったことから、その周りにティムール朝の王族が墓を築いていったのである。

 殉教者の近くに葬られることで、最後の審判の日に、その聖者を介して救いに与ろうという信仰である。面白いのは、この廟群の周りは、一般の人々の墓地にもなっていることである。素朴な信仰心の表れである。