「従北」隠し反日主張

日韓国交正常化50年 識者に聞く(5)

元駐広島韓国総領事 許徳行氏(下)

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 ――日韓の外交官同士ではお互いに懸案などをめぐり話が通じたか。

 実は通じることが多かった。韓国の外交官が海外へ行くと最も親しくなるのが日本の外交官たちだ。ライバル意識や批判精神もあるが、両国は文化的に近く、まるで兄弟のようだ。同盟関係にある米国の外交官たちとも付き合うが、楽な気持ちで付き合えたのは日本の外交官たちの方だった。

 私が98年にタイに赴任した際、前任者から公用車として日産自動車の「セフィーロ」がいいと薦められ、日本大使館の職員に尋ねたこともあった。韓日間で外交交渉する時、互いにもう相手の考えていることが分かっていた。

 ――日本は韓国がなぜここまで歴史にこだわるのかいぶかる声が少なくない。

 日本人が韓日関係を理解しようとする時、韓国文化の理解が欠かせない。私自身、海外赴任が長かったので、韓国にいた時は当然だと思っていた 韓国文化が、実は普遍的なものとはかなり異質な面があるということを感じた。

 その原因は歴史にあり、特に朝鮮時代の影響が強い。現実よりも名分を重視した時代だ。だから植民地統治などを理由に日本に謝罪や補償を求めるのは当然という考えが強く、いつまでもそこに執着しやすい。

 ――朴槿恵政権が日本とは疎遠である一方、中国とは親密な関係を築いている。中国の台頭に対し韓国の外交方針は何か。

 中国は国内総生産(GDP)で日本を凌駕し、世界第2位の経済大国となった。韓国にとり経済パートナーの重要性が、日本より中国の方が上回るようになったのは否定できない。韓国は中国の経済的台頭を活用しようとしている。

 民間ではすでに米国以上に中国との関係を重視するくらいにまでなっていて留学生をたくさん中国に送っている。外国人の中国語試験で韓国の学生は常に上位を独占している。

 歴史的には思想や哲学が中国から伝来し、先進技術も中国から学んだ。文官が武官を支配するシステムなどもそうだ。中国に対する文化的従属性が韓国にはあった。ただ、中国は韓国の独自性をある程度認め、日本のよう完全に植民地化するまでには至らなかった。

 中国から被害を受けたこともあるが、中国に対する好感度は高い。現在は米国と同盟関係を維持しながら経済発展しているのと同様に、昔は中国と関係を維持しながら豊かになった。これに比べ日本は「倭国」として悪いイメージが先行していた。

 ――江戸時代を中心に朝鮮通信使が盛んに日本を訪れ、日本と朝鮮は良好な関係を築いた時代も長かった。

 豊臣秀吉による朝鮮出兵からわずか10年余りしかたっておらず、朝鮮側には再び侵略されないための戦略的選択だった側面が強い。文化の力で侵略を防ごうというものだ。そういう意味で韓国は朝鮮通信使を研究する価値がある。当時は国益とは何かという判断が働いたが、今は国民感情を見ながらの政治であり、そういう面で後退している。

 ――韓国の反日には親北朝鮮派が関係しているという指摘もあるが。

 韓半島が分断されて困難な状況に陥っているのは日本と米国のせいだとする北朝鮮の主張に同調する韓国の従北勢力は、自らが従北であることを 隠しながら、韓国世論受けする反日を訴えて活動している。公式的に反日活動している人たちのうち、少なくない勢力が従北であるとみるべきだ。

 今年3月に起きた駐韓米大使襲撃事件の犯人も北朝鮮を支持する立場から反日、反米を主張している。反日運動のみをする人たちは政治勢力化していない。

(聞き手=清州<韓国中部>・上田勇実)