「夏の日を淡しと思ふ額の原」(野村泊月)。…
「夏の日を淡しと思ふ額の原」(野村泊月)。「額」とは、「額の花」の略で、日本原種のガクアジサイを指す。まだ梅雨の季節には早いが、街を歩いていると、路地や道路の脇に濃い緑の葉を伸ばしたアジサイを見かける。
花が早くも咲きかけているものもあるが、ほとんどはまだ白い蕾が虫のタマゴのようにふくらんでいるだけ。満開になるのは先の話。
もうすぐジメジメした雨の季節がやってくると思うと、少しばかり心が湿りがちになる。梅雨は湿気が高いだけではなく、カビが繁殖し、物が腐りやすくなり、食あたりや食中毒も多くなるから気をつけたい。
アジサイには、手まり咲きのアジサイと原種のガクアジサイがあることが知られている。手まり咲きのアジサイを通常アジサイと呼んでいる。シーボルトがアジサイの新種に学術名として自分の日本人妻の名前をつけたことは知られている。
稲畑汀子編『ホトトギス新歳時記』によれば、ガクアジサイは「紫陽花の一種であるが、花は毬状にならず、ほぼ平らで、中心には小さい碧紫色の花が群がり、その周囲に七、八個の四方のかざり花をつける。その色が、初めは白くやがて藍紫色になる」とある。
ガクアジサイとアジサイを比較すると、どうしても華やかさでは手まり咲きのアジサイに軍配が上がる。そのためか、歳時記でも、アジサイの句の方が多く載せられている。だが、ガクアジサイのつつましやかな花は控えめな日本人の気質を表しているようで、もっと大切にされてもいい。