日本人が寄贈、国連に「平和の鐘」響く
国連本部の改修が終わり、元の日本庭園に戻る
約60年前、後に愛媛県宇和島市長を務めた故中川千代治さんが各国の硬貨を溶かして鋳造し、国連に寄贈した「平和の鐘」が、工事に伴う一時移転を終えて国連本部ビルそばの日本庭園に戻り、6日、式典が行われた。中川さんの長男鹿太郎さん(65)や潘基文国連事務総長らが鐘を打ち鳴らし、平和を祈念した。
潘氏はスピーチで「鐘の不在中、世界の多くの人々は銃声や爆音ばかり聞いてきた。これからは鐘の音を各国の町や村に取り戻したい」と述べた。鹿太郎さんは式典後、「鐘が戻り感激している。この鐘は人々が平和に取り組む機会をつくってくれると思う」と語った。
第2次大戦で出征し九死に一生を得た中川さんは、「二度と戦争をしてはいけない」との思いから平和の鐘を発案。1951年、日本がまだ未加盟だった国連の総会に日本国連協会オブザーバーとして赴き、65カ国から硬貨の寄贈を受けた。帰国後、国内から寄せられた硬貨なども加えて鐘を造り、54年に国連に贈呈した。
鐘は毎年9月21日の国際平和デーや同月の総会開会式で鳴らされる。国連本部改修で2009年から総会議場裏の庭園に移されていた。(ニューヨーク時事)