わが国ではともすると老人が家に閉じこもり…


 わが国ではともすると老人が家に閉じこもりがちとなって、近年、隣近所とトラブルを起こすようなケースが増えている。『高齢初犯』(ポプラ新書)によれば、老人がキレ、事によると事件に至るのは、その社会的孤立が大きく影響している。

 老人をよく見掛ける喫茶店や図書館も社交の場ではなく、息をひそめるようにしていることが少なくない。若者や家族連れが楽しむゴールデンウイーク前後は“憂鬱の季節”である。

 高齢化社会に突入したが、老人の影が薄いというのでは、寂しいばかりだ。「情報・通信機器の飛躍的進歩で、老人の知恵を生かす余地がなくなっている」と評する専門家もいるが一理あろう。

 しかし子供が巣立ち、連れ合いが亡くなった場合、特に男性がひどく落ち込み自ら孤立してしまうケースがよく見られる。日ごろからの社会参加への努力が必要だ。

 ヨーロッパ各国の例では、登録制のスポーツクラブがある。スポーツクラブと言っても、要は地域住民の社交や青少年の社会教育の場だ。ドイツは現在9万カ所以上を抱える。

 会則には「クラブは公益法人であり、営利を求めない」「会員はボランティアとして働く」といった内容が記される。クラブをより良いものにすることで、地域社会を活性化させたいという共通目標がある。老人はその活動に巻き込まれ人々との交流を促される。日本は事情が違うだろうが、参考にしたい。