例えば、責任能力のない子供が第三者に損害を…
例えば、責任能力のない子供が第三者に損害を与えた場合、賠償責任を負わないと規定したのが民法712、713条である。しかし、同714条1項が、監督義務者が責任を負うと定めている。
この場合、監督義務者とは親である。ただし、監督義務を怠ったとは言えない場合などは責任を負わない、という免責条項もあるにはある。が、これが実際に適用されることはまずなかった。9日の最高裁判決はこれを見直した。
小学生が蹴ったサッカーボールが校庭のゴールポスト、校門、溝を飛び越えて道路に転がった。これを避けようとしてバイクで転倒、負傷した85歳男性が入院先の病院で亡くなり、遺族が小学生の両親に賠償を求めて訴訟を起こした。
一、二審は監督責任を怠ったとして両親の責任を認め、1000万円超の賠償を命じた。それが今回、最高裁判決は「通常は危険でない行為で、結果についての具体的な予見可能性がなければ責任は負わない」とする判断を示して、原判決を破棄したのである。
社会通念に沿って最高裁が、子供を監督する親の立場に一定の配慮を示した意味は大きい。親の子供への規範指導やしつけは欠かせない。としても、それで萎縮して子供を外で伸び伸びと遊ばせないようになることも好ましくない。
判決を妥当だとしても、一方で被害者の救済はどうするのか、被害防止の取り組みは、という課題も残っている。