ＣＡ初の３万時間乗務、「結婚なら退職」今は昔

乗務時間が３万時間に達し、同僚に祝福される全日空客室乗務員の井下敦子さん＝２０１４年１１月２０日、羽田空港

　大空を仕事場に４０年間客室乗務員（ＣＡ）を続けてきた女性が、今年還暦を迎える。家族に支えられて出産や子育てを乗り越え、昨年１１月にＣＡでは国内初という乗務時間３万時間を超えたが、「次は３万３３３３時間まで」と意気軒高だ。

　全日空の井下敦子さん(５９)は、テレビドラマ「アテンションプリーズ」の影響で「空から雲海を見てみたい」と決心し、１９７５年に同社のＣＡになった。

　結婚したら退職という風潮が一般的だった時代、５年を超えると同期のほとんどが会社を去った。９１年からは国際線勤務になり、飛行時間の短い国内線よりきめ細かな対応が必要となった。体力的には大変だが、「感動することも多く、楽しい思い出しかない」という。

　９３年に結婚し、その後長女を授かったが、出産後に国際線に復職するＣＡは当時少なく、会社の手続きも複雑だった。「『必ず戻ってくる』という決意表明の作文を書くなど、一大決心だった」。復職後も、手を握って放さない長女と別れ、心を痛めながら泊まりがけの勤務をこなした。

　留守がちの井下さんを夫ら家族は文句を言うことなく支えた。特に義理の母親は「老後の生きがいになる」と長女の送り迎えを引き受けてくれた。「女性が働くことにとても理解があった」と井下さんは感謝を隠さない。

　現在は会社の手続きも簡素になり、休日の多い勤務体系を選べるなど制度も拡充。結婚後も働くＣＡは増え、９４年には２６～２７歳だった平均年齢は、昨年は６歳高くなった。井下さんも「子供ができても働きやすい環境になってきた」と感じるという。

　１０機種以上の旅客機に乗り組み、制服も今年２月の新デザインで６着目となる井下さん。３月の定年後も雇用延長を受け、さらに乗務を続けるつもりだ。