政策総動員で経済再生を


衆院選 自公圧勝 ~課題と展望~(上)

 衆院選では2年前に続く自民・公明両党の圧勝である。経済再生へ「この道しかない」と訴えた自民党が、291議席を獲得。自公両党で3分の2を上回る議席となった。

 今回の選挙で安倍晋三首相が訴えたのは経済政策「アベノミクス」への信任だった。

 日本経済は現在、2四半期連続のマイナス成長で景気は足踏み状態にある。自民党は、それでも「15年続いたデフレからの脱却のチャンスを手放すわけにはいかない」とアベノミクスの継続を訴え、勝利したのである。

 一方、最大野党の民主党はアベノミクスの転換を訴え、中間所得層の充実、「人への投資」などを強調したが、相変わらず十分な説得力を持ち得なかった。同党が与党時代の政権運営の危うさ、拙(まず)さを国民がまだ忘れていないことや野党内の選挙調整がうまくいかなかったことなどが原因だろう。

 今後4年間の政権を任された安倍自民党だが、経済的には10%への消費税再増税を約束した2017年3月までの2年3カ月はとりわけ重要である。

 現在の景気足踏みは、明らかに4月の消費税増税が主因だ。デフレ脱却途上にもかかわらず増税を実行したことで、形成されつつあった「経済の好循環」に自らブレーキをかけてしまったからである。

 前回消費税増税を実施した1997年度の経験(その後のデフレ化と税収低迷による財政状況の悪化)を教訓とせず、消費税増税の影響を過小評価した失政は批判を免れないが、ともかく10%への再増税を延期することで「デフレ脱却へのチャンス」を何とか繋(つな)ぎ止めた形である。

 現在の個人消費不振による景気のもたつきは、民主党などが批判するように、日銀による過度な金融緩和も一因である。円安の進行により輸入原材料価格が上昇し、食料品を中心に生活必需品の値上げが相次ぐ。賃金の上昇が物価の上昇に追いつかず、消費意欲を抑制しているからだ。実質賃金が16カ月連続のマイナスという状況は、決して見過ごせる問題ではない。

 中長期的な成長戦略とは別に、短期的に家計に配慮した臨時交付金などの消費喚起策が不可欠である。円安の過度の進行に苦しむ中小企業への低利融資策も同様である。公明党が強調したように、消費再増税に際しては軽減税率導入に向けた取り組みが欠かせない。

 また、実質賃金のマイナスを食い止めるには、円安で企業収益の改善が見込める企業を中心に大幅な賃上げが求められる。その動向はアベノミクスの成果に大きく影響する。これ以上の円安進行の抑えに、日銀にも金融政策の新たな対応が求められることになろう。

 雇用面での課題は正規雇用をいかに増やすかである。その点で、単なる法人減税だけでなく正規雇用を積極的に増やす企業への減税も、設備投資を促す投資減税とともに検討に値しよう。

 この2年余の期間は、何より経済の好循環を実現し経済再生に全力を注がねばならない。それが税収を増やし、財政健全化のためでもある。社会保障制度の改革などの取り組みは欠かせないが、過度の歳出削減は禁物である。

 経済活動の基盤として、経済再生にはエネルギーの安定供給が欠かせない。当面は安全が確認された原発の再稼働を粛々と進めたい。

(経済部長・床井明男)