トルコ・ナショナルデー、きょう91回目の独立記念日
2023年ビジョン、経済大国10傑入り目指す
「東西の十字路」に位置するトルコ共和国はきょう、91回目の独立記念日(ナショナルデー)を迎える。トルコは、長年欧州連合(EU)への加盟を悲願とし、市場経済体制をダイナミックに取り入れ、欧州・大西洋社会の活動的一員として、発展を重ねてきた。最近は、国境を隣接するシリアやイラクとの関係で、イスラム教スンニ派の武装集団「イスラム国」問題に頭を悩ます場面もあるが、独立100周年へ向けて力強い歩みを続けている。わが国とは124年前(明治23年)に和歌山県串本町沖合で、台風によって座礁したトルコ海軍の「エルトゥールル号」船員を地元の漁民が必死に介抱・救援して、生存者をトルコへ日本の軍艦で無事に送り届けて以来、極めて親密な関係を築いてきた。今やトルコは世界の中でも極めて有力な親日国となっている。
G20の議長国に
中東地域に重要な平和と安定の国
トルコ共和国特命全権大使 アフメト・ビュレント・メリチ
トルコ共和国91周年記念日に際して、世界日報の読者の皆さまにお話しできることは、私の大きな喜びであります。この機会をお借りして、私たちの日本の友人に心からなるごあいさつを申し上げ、また、日本在住のトルコ人コミュニティーに祝意を表したいと思います。
今日、私たちはトルコ共和国宣言の91回目の記念日を祝っています。トルコ国民は、ムスタファ・ケマル・アタチュルクの指導の下、第1次世界大戦後の外国の占領を終わらせる闘いの中、多大の犠牲を払いながら勝利を収め、1923年10月29日に共和国宣言をしました。トルコは今、90年の着実な歩みを経て、建国の父、アタチュルクの理想とビジョン、すなわち、世俗主義の民主国家、社会的には法の支配を守る国、欧州・大西洋社会の活動的な一員、活力ある民間部門と若く、優れた教育を受けた人口に支えられたダイナミックな自由市場経済等が実現した姿を示して立っています。これらは、わが共和国の歴史において、比較的短期間に成し遂げられた、わが国民の重要な業績であります。
現在、トルコは、世界第16位、欧州第6位の経済大国であります。1カ月以内に、トルコは、G20(20カ国・地域)首脳会合の議長国となります。過去12年間に国内的安定、構造改革、そして、年平均5%の成長率のおかげで、トルコは日本にとって信頼される経済相手国となりました。
2023年はトルコ共和国100周年に当たるのですが、わが国の「2023年ビジョン」は、国を世界経済大国の十傑の一つにすることです。8000万の人口で、1兆㌦のGNP(国民総生産)、1人当たりの国民総所得2万5000㌦、5000億㌦超の輸出総額を持つ、新しく、より活力のあるトルコを思い描いています。
実際、イスタンブールは、地域の突出した商業および金融の拠点になっています。飛行機で4時間圏内に、16億の人口を擁する巨大な市場、26兆㌦のGDP、そして8兆㌦の通商などのチャンスに遭遇します。従って、トルコの現在の7700万人の繁栄しつつある市場だけではなく、広大な近隣地域が日本の実業界に絶好の機会を提供します。
トルコの外交政策は、アタチュルクによって打ち出された「内に平和、外に平和」の原則に基づいています。グローバルな変化のインパクトが最も強い地域で、開発の舵(かじ)をプラスの方向に切らせようとの目的をもって、トルコがダイナミックで明確な外交政策を追求しているのは、このような理解をもってのことであります。この役割は、私たちの地域で過激主義と暴力が、最近急増している現状に鑑みて、特に極めて重要なのです。その積極的、現実的、そして人道主義的外交政策のおかげで、トルコは、日に日に不安定になっている地域にあって「平和と安定の島」になっているのであります。
欧米との絆を特に重視する一方で、トルコはまた、アジア太平洋を含む遠方地域を視野に政策の深化をも図っています。このような脈絡の中で、わが国の日本との関係は中核的場所を占めているのです。
今年、私たちは、トルコと日本との間の国交樹立90周年を祝います。従って、両国の正式な歴史的関係は、共和国と同じくらい古いのであります。しかし、友好と連帯の絆の源は、19世紀末の数年にまでさかのぼります。皮肉なことに、1890年串本町海岸沖でのオスマン帝国のフリゲート艦「エルトゥールル号」の悲劇的沈没が、両国民の強い感情的な絆創造への地ならしをしたのです。来年、両国は、この悲しい災難の125周年の追悼を行います。
今日、トルコと日本はあらゆる分野で友好関係を享受しています。両国は共通の理想と価値観を分かち持っています。両国は国際問題に対して共通のアプローチを有しています。
両国の戦略的連携関係は13年と14年に続けて行われた3回の高官の訪問によって宣言され、強化されたのですが、それは間違いなく、トルコの「2023年ビジョン」の実現に当たって重要な役割を果たすものと思います。今のところ、「シノップ原子力発電所計画」と「トルコ・日本科学技術大学設立計画」が、両国の戦略的連携関係の旗艦的計画としての位置を占めています。
この機会をお借りして、トルコ大使として、ト・日間の友情と協力の絆のさらなる強化に貢献する熱意を再度確認したいと思います。私たち、同じような志を持った国は、今日の困難に立ち向かうために、もっと合理化された協力を発展させなければなりません。私は、そのような組織化された協力は、両国だけでなく国際的平和、安定そして繁栄に寄与するものと確信します。
イスラムの教えと違うテロリスト
イスラム研究家 下山茂
暴力、流血、テロ。イラクはいま凄惨な殺戮の舞台となっています。その主役とも言える集団が「イスラム国」です。映像に見られる彼らの姿はほとんどテロリストです。その言動もイスラムの教えからおよそ懸け離れたものです。
テロとは「政治的な目的を達成するために、政府や市民に対して組織的な暴力行為を行うこと」です。イスラムの観点から、テロはどのようなものであれ認められるものではありません。
なぜならイスラムでは人の生命、尊厳、信仰、財産は不可侵のものである、と教えているからです。クルアーンでは、「人を殺した者、地上で悪を働いたという理由もなく人を殺す者は、全人類を殺したのと同じである」(食卓章第32節)と述べられています。
人類への慈悲として下され、その本質に創造主を知り愛することが含まれている最後に啓示された宗教であるイスラムの教えは、テロや不正に血を流すことなど、社会の安定や信頼を揺るがすいかなる行為も認めていません。
ただし歴史を通して、宗教がテロや暴力行為を正当化するために利用されてきたことは、しばしば見受けられることです。特に20世紀の最後の四半世紀、世界の一部で宗教的な熱狂が高まる風潮が見られ、宗教の衣を着たテロや暴力が増えています。
アッラーはすべての人に自由な意思を与えられました。その意思によって行ったことに対して人は審判を受けるのです。そして人は何らかの過失を犯すものです。イスラム教徒であっても、まったく罪を犯していない人はいません。例えばほかの教えを信じている人々の中にも、そういう人がいるのと同様に、イスラム教徒の中にも盗みを働き、詐欺を働き、ほかの人の命を奪う人がいます。
しかし、その罪はイスラムに帰せられるものではありません。その責任はあくまでその人に帰せられるものなのです。イスラム国のように、イスラム教徒の中にもテロ活動を行う人がいるかもしれません。しかし真のイスラム教徒はイスラム国を認めることは絶対にありません。イスラムの教えに誠実なイスラム教徒は、イスラムのイメージを損なった彼らを批難しています。
また何がテロなのか、明確にしなければなりません。テロという言葉が強い立場の者によって意図的に使われることがあります。祖国が支配、占領され、生命や財産、人としての尊厳を失った人々の、その生命や尊厳を守るための努力や戦いをテロと見なすことは正しくありません。いま世界で起きていることの背景を正しく判断することが求められているのです。
イスラム国のテロや暴力は絶対に許してはいけませんが、イスラム国がどのような背景から生まれてきたかも考えなくてはなりません。2003年アメリカは、大量破壊兵器を名目にイラク戦争を始めました。大量破壊兵器はなかったにもかかわらず、イラクの多くの民間人がその戦争で命を失いました。
イスラム国のような集団を生まないためにも暴力の連鎖をこそ止めなければならないのです。