映画「馬々と人間たち」
奇想天外なドラマの連続
アイスランドには、1100年以上も交雑することなく、純血種が保たれてきた馬がいる。小柄で色と模様は多彩。この国で馬を持つことは当たり前で、馬は家畜でありながら家族や友人のような存在だ。 ベネディクト・エルリングソン監督はじめ、出演者のすべてが馬に親しんでいるという。
そのような田舎を舞台に、馬から見た人間、人間から見た馬が描かれていく。奇想天外なドラマの連続で、悲劇も喜劇もあるが、ユーモアに包まれ、抒情的。
独身男性のコルベインは子持ちの未亡人ソルヴェーイグと交際し、互いに惹(ひ)かれあっていて、村人たちもその進展に興味を持っている。
コルベインが彼女の家を訪れて、やがて牝の愛馬グラウーナにまたがって帰途に就くが、その直後、未亡人の種馬ブラウンがグラウーナに向かって発情し、突進して愛の行為に及んでしまう。
馬上にいたコルベインはショックのあまり、ソルヴェーイグのことすら眼中になくなり、愛馬の処遇をめぐってある決断をする。
ヴェルンハルズルはウオツカが大好き。ロシア船が来たと聞いてウオツカを手に入れようと、愛馬ヤルプルに乗って向かうが、船は出航していた。
果敢な主人と馬は一体となって冷たい海に飛び込み、船を追い、追いつき、ついにそれを手にして戻ったが、酒は強く、予期せぬ展開となる。
このような話が五つ、六つ続いて、やがて放牧した馬を集める秋となり、人と馬とが興奮の渦に巻き込まれる。人馬一体の演技が素晴らしい。(岳)