吉田沙保里「終わりと思った」、薄氷の4連覇
アジア大会で、リオ五輪に向けて体づくりを
本調子でない中、最後は代名詞のタックルで決めた。55キロ級の吉田は、決勝で圧勝を収めたが、薄氷を踏んだ4連覇に「ほっとしている」と2度繰り返した。
鍾雪純(中国)との1回戦でよもやの大苦戦。3月の試合で快勝した相手で「油断もあった」。開始早々に、足を刈られてフォール寸前まで追い込まれた。「やばい、これで終わりかなと思った」。上体を反らせて懸命にこらえること約1分。脳裏には、大学の後輩2人の姿が浮かんでいた。
前日に金メダルを手にした登坂絵莉と渡利璃穏。吉田と同じく2週間前の世界選手権に出た登坂は、2度の苦しい減量を乗り越えた。渡利は決勝で残り3秒の劇的な逆転勝ち。「ここでフォールされたら後輩のためにならない。最後まで諦めない」。6-9の残り1分。タックルを軸にした猛攻で逆転してみせた。
体重が増えにくい吉田には、53キロ級で臨んだ世界選手権から55キロ級に戻すには時間が短過ぎた。前日計量では53・8キロ。連戦の影響もあった。ロサンゼルス五輪金メダリストの富山英明氏は「疲れもあったと思う。腰が高かった。だから足技も食った」と見る。
10月に32歳になる。「怖かった」。最近、吉田が試合後によく口にする言葉だ。「リオデジャネイロ五輪に向けて、負けない体づくりをしたい」。打倒吉田を掲げる外国勢との勝負に加え、年齢との闘いも始まったのかもしれない。(時事)