クラシック音楽の世界では、…


 クラシック音楽の世界では、演奏活動と共にそれを支える学術研究が行われ、相互協力の中で上演が進められている。上演史が記録されてきたように新たな上演は新しいページを開く。

 先週、日本ロッシーニ協会(水谷彰良会長)の主催により、東京・紀尾井ホールで歌劇「マオメット2世」抜粋の公演が行われた。近年評価の高いオペラ・セリアの頂点をなす名作で、1820年ナポリで初演。

 出演は、天羽明惠、家田紀子(ソプラノ)、富岡明子(メッゾソプラノ)、阪口直子(コントラルト)、中井亮一(テノール)、須藤慎吾(バリトン)、金井紀子(ピアノ)他。各声部が同等に扱われた珍しい曲だ。

 歌手たちは、美しい超絶技巧を披露、劇的で大変聴き応えがあった。物語は、オスマン帝国第7代スルタン、メフメト2世が東ローマ帝国を亡ぼし、1470年ベネチア領のネグロポンテ島を占領した史実を背景にしている。

 イスラム教徒との戦いの中で、ベネチア人司令官の娘アンナが父との約束を果たすために自害するところで幕を閉じる。が、再演以降、大幅な改革がなされ、フィナーレまで検閲でハッピーエンドに改編。

 上演は続いたが、初版の革新性は失われたまま。復活は1985年。同協会の上演もオリジナル版によるもので、フィナーレでドラマは頂点に達した。聴衆は優れた演奏家による「ロッシーニの世界」を十二分に堪能した。